放蕩記

科学ライター 荒舩良孝の日記

取材レポート

はやぶさ2、次はインパクター分離

最近、はやぶさ2の記者会見のときにしか、ブログを書いていないが、今日もはやぶさ2の記者会見の話題です。

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今日は、今日の会見の一番の話題は、4月の第1週目に実施される衝突装置(SCI)運用について。
目標となる場所と、日程が発表された。
SCI運用は、4月4〜6日にかけて実施され、リュウグウに人工クレーターがつくられるのは、4月5日11時36分頃の予定だそうだ。
この時間帯については、周りにいた新聞社の人たちが「夕刊に間に合うか心配だ」と漏らしていた。
新聞社やテレビ局は速報を伝えようとすると、タイムリミットがあるのでつらいところだよね。

小惑星に人工的なクレーターをつくる試みは、なかなかできない試みなので、ぜひ、成功して欲しいところだ。
リュウグウは岩に覆われてはいるが、全体的な密度も低く、脆いのではないかという観測結果も出てきている。 
素人目には、重さ2kgの銅の塊をぶつけたら、割れてしまうのではないかという心配をしてしまうのだが、いろいろと計算をしてみると、それほど弱くもないようだ。
だから、ほどよい大きさのクレーターができるのではないかと期待が高まる。

SCIを打ち込むところは、分離カメラDCAM3によって撮影を試みるが、うまく撮れるのかは未知数だ。
しかも、SCIをリュウグウに打ち込んだときに発生するであろう噴出物にぶつかって壊れてしまう危険性も大きい。
DCAM3の画像で確認できないときは、クレーターができたかどうかの判断は、実施前と実施後の画像の比較でおこなわれるので、かなり時間がかかるだろう。

ともかく、小惑星に人工的にクレーターをつくるという試みは、とても貴重なものなので、成功して欲しいし、その瞬間もしっかりと記録されたらいいなと願っている。

はやぶさ2の記者会見へ

もう3月になってしまった。
最近、このブログでははやぶさ2関連の話題しか書いていないので、はやぶさ2関連の仕事しかしていないように思われるかもしれないが、もちろん、それ以外の仕事もしている。
というか、そっちの方が多い。

とは言っても、ブログでは今日もはやぶさ2関連になってしまうことをご了承いただきたい。

今日はJAXAではやぶさ2関連の会見日。
原稿の仕上がりが遅れてしまったが、何とか、仕上げ、関係各所に送ってから会見会場に駆けこんだ。
滞りがちな他の仕事も少しずつ進めていますと、誰となく。

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今日の記者会見のは、タッチダウンのときに小型カメラ(CAM-H)で撮影された画像をつなげたコマ撮り映像だ。


記者会見で、プロジェクトサイエンティストの渡邊誠一郎さんが、「砂や岩石の破片が祝福の紙吹雪のように舞い上がっているように見えた」と表現されたように、はやぶさ2のタッチダウンとともに、表面から砂や岩石が一気に舞い上がる迫力のある映像だった。
この映像を見る限りでは、サンプルもしっかりと回収できたと思われる。
(本当に回収できたかどうかは、地球に帰ってきたカプセルを開けてみないけど。まさに玉手箱)

しかも驚いたことに、このタッチダウンの誘導精度は1m。
つまり、はやぶさ2の中心点が、目標としていたL08-E1の半径3mの円の中心から1mしかずれていなかったということだ。
これは神業といってもいいのではないだろうか。

ただ、予想を超えて砂や岩石が舞い上がってしまったために、はやぶさ2の機体底面に設置された光学カメラONC-W1に塵などがたくさん付着して、感度が半分くらいに下がってしまったという。
通常の運用には支障がないが、タッチダウン運用などには不安要素となるので、今後、タッチダウンがおこなえるかどうか慎重に見極めるようだ。

この結果を受けて、はやぶさ2のリュウグウへのタッチダウンはあと1回で終わりにするかもしれない。
リュウグウへのタッチダウンは、リスクが大きく、表面の鉱物の組成もそれほど変わらない。
しかも、カメラの感度も下がってきたということを考えていくと、納得のいく決断だ。

とういうことで、2回目のタッチダウンは、インパクターという装置を使い、リュウグウに人工クレーターをつくった後におこなわれる。
インパクターというのは、リュウグウの上空から重さ2kgの銅の塊を秒速2秒の速さで打ちこむ装置。
直径10mほどのクレーターができれば、その中にタッチダウンとなるだろうし、できたクレーターが小さければその近くにタッチダウンする方向になるだろう。
インパクターをぶつけて、余計でこぼこができてしまうようであれば、2回目のタッチダウンそのものもなくなってしまう可能性もある。

はやぶさ2の今後の大まかな運用スケジュールは、こんな感じ。

小惑星にインパクターをぶつけるという試みは世界初になる。
その結果がどうなるかというのはとても楽しみなところだ。

ここまでいろいろな結果が出てしまった後でなんだが、今日発売の天文ガイド4月号で、はやぶさ2のタッチダウン成功の速報を1ページ書いた。
月刊誌なので、こういう情報はすぐに古くなってしまうのだが、タッチダウン成功の情報を、何とかねじこんだ。

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書店などで見かけた人は、手にとってパラパラと見てくださいね。
 

はやぶさ2記者会見情報

今日は、2月に入って初めてのはやぶさ2の記者会見。
ということで、会場に行って、話を聞いてきた。
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今日のメインの話題は、何といってもはやぶさ2の1回目のタッチダウンについて。
タッチダウン運用は、2月20日〜22日となり、場所はL08-E1に決まった。

「L08-Eって、どこ?」という人のために、おさらいをすると、もともとタッチダウンを予定していたL08-Bのエリアから少し離れた場所にある少し狭い領域だ。
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2018年10月下旬におこなわれた3回目のタッチダウンリハーサルのときに落とされたターゲットマーカーの近くにあるのだが、L08−B1に比べると狭いという難点があった。

もともとタッチダウンの候補となっていたL08-Bは、70cmほどの岩塊が多くあることがわかってきて、着陸候補地点はL08-B1に狭められていた。
しかも、L08-B1は、60cmくらいの岩塊が多くありそうだということもわかってきて、どこに着地するかという問題は、とても悩ましいものになっていた。

結局、今回、L08-E1に着地すると決めた要因は、ピンポイントタッチダウンという手法を採用したことと、とても深く結びついている。

ということで、タッチダウンの手法について、少し見ていこう。
タッチダウンの手法は、はやぶさのときに使用したはやぶさ方式とピンポイントタッチダウンが検討されていた。
はやぶさ方式は、直前に落としたターゲットマーカーを追いかけながら、探査機の高度を徐々に落としていき、タッチダウンをしていくというもの。
この方式の場合、着陸精度はターゲットマーカーの投下精度に依存することになる。
3回目のリハーサルで投下されたターゲットマーカーはL08-Bの中心から15.4mの地点に着地したので、この時点でのターゲットマーカーの投下精度は15.4mだ。
ということは、はやぶさ方式でのタッチダウンでは、精度に不安があるので、ピンポイントタッチダウンが採用されることになったのだろう。

ピンポイントタッチダウンというのは、事前に投下したターゲットマーカーを利用して、より精度の高いタッチダウンを実現しようというもの。
はやぶさ2は、リュウグウ上空45mまで降りると、3回目のリハーサルで投下したターゲットマーカーをとらえ、カメラの真ん中にターゲットマーカーが来るように高度8.5mまで降りる。
そうしたら、今度は着地点に近づくように水平移動するが、このとき、カメラの視野の端にターゲットマーカーが入るぎりぎりの場所に来たら、一旦動きをストップして、最終の着陸態勢を取る。
ピンポイントタッチダウンでは、ターゲットマーカーを起点にして、着地点が東西に何メートル、南北に何メートルずれているのかという情報を、事前にはやぶさ2に伝えており、その情報をもとにはやぶさ2は着地をするので、視界にターゲットマーカーが入っていることが重要になる。
ただ、今回の場合、いつまでも視界にターゲットマーカーを入れておくことができない。
高度8.5mははやぶさ2を目的の場所へ正確に誘導できるぎりぎりの高度ということで、この高さで、視界にターゲットマーカーが入るぎりぎりのところまで来て、体勢を整えたら、後は後は、一気にL08-E1へと落下していくことになる。

つまり、ピンポイントタッチダウンは、ターゲットマーカーに近い方がタッチダウンの精度を高めることができる。
L08-E1は、東西方向に一番広い場所で差し渡しで6mしかないが、平坦な表面がありそうな場所であることと、ピンポイントタッチダウンによって高い精度で誘導できることを合わせて考えたときに、今回の着地点はここしかないという結論に至ったという。

現在の試算では、ピンポイントタッチダウンであれば、2.7mの精度ではやぶさ2を導けることができるので、半径6mの円の中にタッチダウンすることは可能であるという判断がされている。
JAXAが公表している図では、L08-E1はおよそ6m×10mの長方形のエリアが示されているが、実際のタッチダウン運用では、そのエリアに内接する半径3mの円の中にタッチダウンすることを目指す。
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はやぶさ2の初のタッチダウンまであと2週間ほど。
タッチダウンが成功して、サンプルが無事に採れることを祈る。

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ドキュメント記者会見の1日

今日は1日、神奈川県の相模原にいた。
はやぶさ2のリュウグウ到着に合わせた記者会見が設定されていたからだ。
もらっていた案内には、記者会見そのものは16時開始予定だったが、会見場が開場するのは9時と書いてあった。

何で、こんな早い時間から、開場するのか少し不思議な感じがしたが、これは開場と同時に会見場に入らないといい席が取れないと直感した。

僕は雑誌や本などの媒体で主に仕事をしているので、記者会見に出ることは必須というわけではない。
最近は、ライブ配信もされるようになったのでそれを見るのもいいだろう。
でも、興味のある分野の記者会見やプレス公開などにはなるべく顔を出したいと思っている。
無駄もあるかもしれないが、現場に行くことで感じることがたくさんあると思うからだ。

幸い、今日は原稿を書く以外の予定を入れてなかったので、開場に間に合うようにJAXA相模原キャンパスに行くことにした。

で、JAXA相模原キャンパスに着いたのが、8時40分過ぎ。

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もう、開場待ちの記者の人たちが並んでいた。
早い。

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開場と同時に、たくさんの記者が入ってきて、どんどん席が埋まっていく。
やはり、読み通りだった。
僕もいい席を確保させてもらった。

席を確保したら、パソコンと取材道具を広げて、時間が来るまで、自分の持っている仕事をしながら待つことに。

どこかに雇われているわけではないので、会見に参加したからといってお金が入るわけではない。
空き時間を有効に活用して、自分の持っている仕事を進めていかないと。
依頼された仕事もちゃんとやっていますよ(と誰となく)。
まあ、こういうことができるのも、1つの利点と言えば利点だが。

今日は、記者会見までの間に情報提供の時間が設定されていた。
10時30分過ぎに、第1回目の情報提供の時間が来た。

どんな情報が提供されるのかと思ったら、はやぶさ2がリュウグウに到着したというものだった。

いきなり到着の発表かと驚いてしまったが、そうなると聞きたいことがたくさん出てくる。
他の記者も同じだったようで、質問がたくさん出て、1時間以上の本格的な記者会見となった。

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あまりの衝撃に、速報記事を書かないともったいないという気持ちになって、ブログを1つ書いてしまった。

 〈速報〉はやぶさ2、リュウグウに到着(放蕩記)


そして、14時30分にもう一度、情報提供の時間を経て、16時からプロジェクトマネージャーの津田雄一さんをはじめ、はやぶさ2の運用を取り仕切る主要メンバーが登壇する記者会見がおこなわれた。

16時の記者会見直前には、会見場の席はほぼ埋まり、立ったまま聞いている記者もいた。
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結局、今日は1日で3回の記者会見に出たような感覚で、すぐには処理しきれないたくさんの情報を得た。

待ち時間は、自分持っている仕事の記事を書きながらだったので、時間の流れとしては密度の高い1日だった。

さすがに、疲れたのだけど、帰りがけにきれいな空や月を見ることができたので、ホッと息をつきながら家に帰った。
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久しぶりに東北大学を訪問

取材で久しぶりに東北大学理学部におじゃました。
東北大学理学部のある青葉山キャンパスに行くのは数年ぶりだ。
仙台駅からバスで行こうと思っていたら、何と今は地下鉄で行けるようになっていた。
バスは乗車人員が限られているし、時間がかかるのでちょっと不便だった。
地下鉄でできたことで、仙台から青葉山キャンパスまで10分くらいで着いた。
とても便利になった。

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車両も新しいにおいがしたし、駅も真新しい。

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東北大学理学部の新校舎。
東日本大震災からの復旧、復興の一環として建てられた。
震災直後に東北大学理学部の被害状況を伺う機会があったので、復旧、復興のシンボルとして新校舎が建てられたのはうれしいことだ。

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ちょっと見にくいが、他の建物には震災のときについた傷跡が残っていてちょっと痛々しい。
そんなことを気にしながらキャンパスを少し歩いたりした。

取材まで間があったので、学内の食堂で腹ごしらえ。
ランチメニューの中から「焼肉の二種盛り」を頼んだ。
学食だから、かなりボリュームのあるものが来るのかなと思っていたら、盛りつけはおしゃれな感じだった。

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ちょっと想像していたのとは違い、肩すかしを食らった感じだったが、それでも、これにご飯とみそ汁がついて500円ほどなので、とても安い。

この食事の後は、無事に取材も終わりました。

あと、この日は、東北大学ニュートリノ科学研究センターの井上邦雄先生にもお目にかかることができた。
先生には、「5つの謎からわかる宇宙」を執筆するときに取材させて頂き、たいへんお世話になった。
しかも、先生のお部屋には本がありました。

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ということで、本と一緒に記念撮影させて頂きました。
どうもありがとうございます。