放蕩記

科学ライター 荒舩良孝の日記

災害

北海道地震のしくみがわかってきた

9月6日に発生した北海道胆振地方の地震の発生原因がニュースで報じられていた。

 北海道地震 「スリバー」衝突エリアで地震発生(NHK)

スリバーというのは、海洋プレートが沈みこむことによって、陸側のプレートの一部だけれども、他の分とは逆方向に力のかかる小さなプレートのことで、今回の地震は、このスリバーが他のプレートとぶつかって、ひずみが蓄積される部分でおこったという。

スリバーは西日本を中心に他にもあるという。
マイクロプレートの話は、ここ数年、話題に上っていた。

地震のしくみはまだまだわからないことが多く、新しい用語が出てくると、何だろうと思ったり、ちょっと怖いなと思うこともあるだろう。
だけど、その都度、新し知識を入れて、自分の住んでいる場所にどんなリスクがあるのかを知っておくのは大切だと思う。
日本に住んでいる以上、どこに居ても、地震や台風などの災害に遭う可能性があるのだから。
 

阿蘇大橋周辺の立体地図(今後の防災を考える上で)

今回の熊本地震に関連して、国土地理院のWebページで様々な情報が提供されている。

 平成28年熊本地震に関する情報(国土地理院)

ここには陸域観測技術衛星のだいち2号による観測結果や、ドローン撮影による動画などが掲載されている。
さらに、最近、空中撮影をもとにして作成された阿蘇大橋周辺の立体地図が公開された。
今後の防災を考える上で貴重なデータだと思う。

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ここは、地震によって激しい斜面崩壊と橋の崩落が起きた現場だ。

立体地図は、パソコン上の操作で拡大、縮小、回転などの操作ができるので、今回の災害現場をいろいろな角度から見ることができる。

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航空写真のようなアングルで全体を眺めることもできる。

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横から見ると、谷底が土砂で埋まってしまっていることがわかる。

このように、いろいろな角度から見ることで、今回の地震の被害の大きさが改めてよくわかる。
データをダウンロードして3Dプリンタで出力することもできるという。
興味がある人は、一度見てみてはいかがだろうか。

*今回のブログで使用した画像は、国土地理院が提供しているデータを元に作成しました。


 

東京防災がやってきた

ここ最近、ネットで話題だった「東京防災」。
東京都が製作して、都民に配っている非売品の冊子だ。
この冊子のことが話題になってしばらく経つが、自分のところにはなかなか来なかった。
「うちは来ないけど、どうしたのかな」と思っていたら、今日、郵便受けに黄色いものが入っていた。

東京防災だ。
噂の冊子がやっと来た。

早速、パラパラとめくってみると、やはり、噂どおり、中身がとても充実していた。
大地震についての対策が中心だったが、集中豪雨、竜巻、火山噴火、テロ・武力攻撃、感染症など、さまざま災害への対策も記されていた。
それだけでなく、緊急時に役立つ技術のマニュアルもわかりやすく載っている。
そして何よりも、ライターとして嬉しかったのが、さまざまな、災害知識やデータがまとまっていて、ちょっとした資料集となる。
冊子として手軽に持ち運べる大きさなので、原稿を書くときに重宝しそうだ。
そういう意味でも、いつも手元に置いておきたい1冊だ。

災害報道から考えたこと

今年は台風の当たり年だ。
台風18号の接近から上陸に伴って、一昨日から日本全体が大雨に見舞われた。
台風が上陸した東海地方や北陸地方だけでなく、台風からは離れていた関東地方や東北地方でも豪雨が降ったのには驚いた。
とくに、栃木県や茨城県では鬼怒川から水があふれ出したり、土砂崩れが起きたりと大きな災害になってしまった。
改めて自然は怖いなと思った。
今回の豪雨は、台風18号の影響で南から湿った暖かい風がやってきたところに、日本の東側を北上している台風17号から東風が流れこんできて、関東や東北付近でぶつかって、南北に細長い線状降雨帯ができてしまったのだ。

テレビ各局は、災害情報の特別番組に切り替わり、各地の様子や最新の情報を伝えていた。
僕も仕事の合間にテレビを見たりしていたが、少し違和感があったのは、どの局も同じような場所からしか中継しなかったことだ。

特に、映像が集中していたのは鬼怒川の堤防が決壊した茨城県常総市からの中継だ。自衛隊のヘリコプターが被災者を救助する様子とNHKや民放各局がこぞって伝えていた。
そのような状況でも午後のロードショーで48時間を放映していたテレビ東京のぶれない方針には、逆に感服した。

まあ、その話は置いといて、なぜ、違和感を覚えたのかというと、テレビ画面から家の屋根やベランダなどに取り残された人が救助される様子などを移しているのだが、ヘリコプターが近づいているので、救助を待っている人にもかなり強い風が吹きつけている様子が見て取れた。
自衛隊のヘリコプターからの風はしかたがないとしても、放送局や新聞社のヘリコプターも集まってしまうと、その風も影響しないのだろうかと心配になる。

テレビは画像があってなんぼの世界だから、被災者がリアルタイムで救助される様は迫力も説得力もあるので、撮影したいという気持ちはあるだろう。
それは理解できるが、あまりにも横並びというか、同じものを伝えすぎな感じがした。
これだったら、テレビ局が1つでも問題ないんじゃないのといいたくなってしまう。
特に今回のように、ヘリコプターの風や音が人の迷惑になりそうな状況で、こぞって撮影競争をするのは果たしていいものなのだろうか。

これは報道の現場にいない人間だからいえることで、当の記者やカメラマンからしたら、それぞれの言い分があるだろう。
でも、その局ならでは、その記者ならではの切り口で伝える報道番組を見たいと思う。

まあ、報道だけでなく、僕の関わっている科学記事などもそうなんだけどね。
自分独自の視点や伝えかたってなんだろうと改めて考えるきっかけをもらった感じだ。 

ネパール地震の報告会に参加して

ちょっと古い話になるが、5月25日に『結ぶプロジェクトpresents ネパール大震災支援途中報告会』というチャリティーイベントに行ってきた。

4月25日に大きな地震が発生したネパールの様子を、実際に現地を訪れたアウトドアプロモーターの大木博ハカセさんと、極地建築家の村上祐資さんが報告をするという会だった。
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途中からはエベレスト登山の途中で地震に遭い、登頂を断念しつつもネパールで支援活動をしていた近藤謙司さんも加わり、3人が体験してきた生の情報を語ってくれた。

日本から見るとネパール全土が地震でたいへんという印象を受けるが、地震の被害は地域によってさまざまで、カトマンズではあまり被害を受けていないように見えるところもあれば、建物を木や竹で支えていているところもあったりとさまざまだったという。

それから、ブンガアティという人口5000人ほどの田舎町では、被災人たちが、農作業をしながら、公的な部分の復旧作業もやったりと、かなりたくましく、生きる力があるのだと感じたそうだ。

だが、ネパールの独特の文化や階級意識などで、やってきた援助を受け取れなかったり、大きな団体の寄付では、草の根の人たちに届かない現状などもあるという。

例えば、ネパールに寄付をするなら、小さな団体の方が、自分が使って欲しい用途にピンポイントで使ってもらえるので、信頼できる団体を探して、そこに寄付をした方がよさそうだ。

また、3人が口々にいっていたのは、今できる一番いい援助は、実際にネパールを訪れて観光することだという。
地震の影響でいけるところも限られるかもしれないが、訪れることで、ガイドやホテルなど、現地の人たちが潤う。
大木ハカセさんは「震災が起きて、現地の人の役割がなくなってしまうことが一番怖い」といっていた。

いろいろな人たちが行くことで、現地の人たちが役割をもてば自信がついて、立ち上がる足がかりになるとのことだ。

地震が起きた土地に観光でぷらぷらと行ってもいいものなのかなと思ってしまうが、3人の話だといいtらしい。
むしろ、積極的に行くことで、ネパールがいろいろな人の話題になって、半年後、1年後も忘れられないで、意識を向けられることが大事なようだ。

私はネパールに行ったことがないが、これを機会にネパールにも行ってみたいと思う。 

最後に、今回の報告会を主催した結ぶプロジェクトのWebページのリンクはこちらです。

 アウトドア災害支援チーム 結ぶプロジェクト