放蕩記

科学ライター 荒舩良孝の日記

報道

ブラックホールパワーで、テレビにちょこっと登場

昨日、イベント・ホライズン・テレスコープの観測結果が発表された。
もちろん、あの発表はすごいことで、今まで誰も見たことのなかったブラックホールの影を撮影することができたのだ。



ちなみに、イベント・ホライズンというのは、日本語に訳すと事象の地平線(事象の地平面)とよばれるもので、光すらも出ることのできないブラックホールの領域とその外側を分ける境界だ。
ブラックホールの本体は、理論的にはとても小さく圧縮されているし、事象の地平線より内側からは、光すら出ることができないので、その内側はどうなっているかわからない。
一般的には、事象の地平面の大きさがブラックホールの大きさと解されることが多い。

今回撮影されたのは、ブラックホールの巨大な重力の影響でできるリング状の光で、その内側の黒い部分がブラックホールの影になる。
ただし、この影は事象の地平線よりも幾分大きくなるので、事象の地平線そのものではないので注意が必要だ。

まあ、前置きのようなものが長くなってしまった。
この発表があってから、SNSやテレビ、新聞などがかなり盛り上がっている。
それだけの成果なのだが、「ブラックホールの姿をとらえた」という言葉だけでも、すごいと思わせるだけのパワーがある。

そして、そのパワーが僕のところまで及んできた。
なぜか、この観測結果がどうすごいのかということについて、NHKの取材に答えることになったのだ。
といっても、直接、僕のところに話がきたのではなく、天文ガイド、子供の科学を出版している誠文堂新光社にきた。
僕は天文ガイドと子供の科学の両誌に時たま書いているし、特に子供の科学でブラックホールの記事も書いたことがあるので、両誌の編集長とともに取材に答えることになったのだ。
なんたる棚ぼた。

今日は他の用事もあったのだが、それは途中で退席して、取材現場へ。
すると、NHKの高井アナがやって来た。
高井アナははやぶさ2のインパクターミッションのときもプレスルームに来て、取材していた。
現場で取材を積極的にしているようだ。

慣れないテレビ取材もあって、僕は終始、テンション高めに受け答えをしていた。
どのくらい採用されるかわからないけれど、思っていたよりも長めに高井さんによる取材があり、3人がいろいろと話をした。

そして、午後7時。
NHKのニュース7が始まった。
コーナーとしては、イベント・ホライズン・テレスコープでブラックホールの観測をして、その反響が大きいというものだった。
コーナーの終わりの方で、僕ら3人が登場。
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いろいろと話したが、僕のコメントとして採用されたのは、この一言のみ。
NHKですから。

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テロップでは、「来月発売の特集記事に」と踊っているが、この時期になると、誌面が結構固まっているので、来月号は2ページくらいの速報で、特集を組むとしたら再来月号になると思います。 
NHKですから。

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でも、わりと姿は結構映っていたので、これはこれでいい役回りだったかもしれない。

両親もこのニュースを見ていたようで、「できすぎだな」と電話をくれた。
短い登場にもかかわらず喜んでくれたようだった。

放蕩ではなく、ちょっとした親孝行にもなったようです。

写真は、放送を見てくれた有人のA賀くんから送ってもらいました。
A賀くんありがとう。

ということで、現場からは以上です。

イプシロン4号機の記事が掲載されました

早いもので2月も10日が過ぎてしまいました。
最近、仕事の成果物などをあまり紹介していなかったので、久々に紹介します。

Yahooニュースの一角にあるTHE PAGEのコーナーに先月打ち上げられたイプシロンロケット4号機についての記事が掲載されました。

 固体ロケット「イプシロン」が切り開く宇宙ビジネス 小型衛星を安価に打ち上げ(Yahooニュース)

もともとTHE PAGEという独立したニュースサイトがあって、昨年から、そこにはやぶさ2関連の記事を時々書いたりしていたのですが、何とTHE PAGEがYahooニュースと一緒になってしまいました。

私自身は、やることは変わらないし、やり取りしている人も変わらないのですが、媒体がちょっと変わったという感じですね。
THE PAGEは独自サイトとYahooニュースへのニュース掲載の2つの方法でニュースをリリースしていたのですが、今は、独自サイトはなくなって、Yahooニュースだけのリリースになっています。

個人的にはTHE PAGEの独自サイトは好きだったので、ちょっと残念です。

それはともかくも、せっかく現地に取材に行ったので、少しでも記事としてアウトプットできたのはよかったです。
短期的な収支だけを考えると赤字ですが、アウトプットにつなげてなんぼの部分もあるので、まずは1つ成果があがってよかったなという感じです。

それから、天文ガイドのWebにも、短い記事を書きました。

 イプシロンロケット4号機打ち上げ成功!(天文ガイドWeb)

こっちには撮影した写真も掲載してもらいました。
まあ、ささやか成果ですが、1つ1つ積み重ねていかないとね。

 

吉川真さんに直撃(Narure 2018年の10人に選出)

今日は昨日の続きの話を。
はやぶさ2といえば、年末にミッションマネージャの吉川真さんが、科学雑誌「Nature」の選ぶ、今年の10人に選出された。


昨日の記者会見が終わった後に、吉川さんにお声がけして、選ばれた感想などを伺った。
吉川さんはNatureからの取材を受けていたものの、それはあくまではやぶさ2のミッションに関連したものだったそうだ。
同じ時期に、Nature以外にも海外のメディアからの取材が続いていたこともあり、吉川さんとしては通常の取材の1つとして受けていた。
そのため、今年の10人に選出されたことは直前まで知らなかったという。

吉川さんが選ばれたのは、はやぶさ、はやぶさ2での貢献はもちろんのこと、研究生活の中で一貫して小惑星の研究をしてきたこと、天体の衝突問題にも関心をもち、昨年は東京で国際会議を開いたことなども評価されたのではないかとおっしゃっていた。

吉川さんが選ばれたのは、はやぶさ2探査が世界的に注目されていることの現れではあるが、その要因の1つとして、英語での情報発信を積極的におこなった効果があったのではと語っていた。
はやぶさ2では、日本語での情報発信とほぼ同時に英語でも情報を発信していて、それが海外のメディアから非常に受けがいいそうだ。

英語で情報の情報発信は、世界の中では埋没してしまうという危機感からだったそうだが、情報へのアクセスがすぐできるようになった結果、存在感を示せたということなのだろう。

この話を聞きながら、情報発信は大事だなと深く心に刻まれた。
その前に、画期的な成果をあげなければいけないのかも知れないが。



NHKスペシャルをみて思ったこと

東京は今日も雨だ。
天気予報を見ていたら、東京は4日間連続で日照時間が0だということをいっていた。
そういえば、ここ数日太陽を見ていない気がしたが、日照時間が0だったということに改めて驚いた。

夜、テレビをつけたらNHKで相馬野馬追祭のドキュメンタリー番組をやっていた。
カメラが追っていたのは、南相馬市小高区の人々。
ここは福島第一原子力発電所の事故の影響で今でも警戒区域に指定されているために昼間に立ち入ることができても、住むことができない。
住民は、この地域の外で避難生活を送っている。
でも、年に1度行われる相馬野馬追祭に参加するために、準備をして、集まってくるという内容だった。
相馬野馬追祭があるということは知っていたが、内容までは知らなかった。

参加者が自分で馬を操り、行列をしたり、甲冑競馬をしたり、打ち上げた神旗を取りあうといったいろいろな行事があることを初めて知った。
と同時に、相馬地区の人たちにとって馬との生活は特別な意味があるのだなと思った。
津波によって馬を流されてしまったという人もいたけれど、原発事故で地元を離れることを余儀なくされてしまうと、もとの生活を取り戻そうと思っても難しいよなと思う。
それでも、お祭りを絶やさないように努力を重ねている人たちの姿は胸を打つものがあった。

番組の中では小高地区は来年4月にも警戒区域の指定が解除されるかもしれないが、帰ってくるかどうか迷っている人の様子も紹介されていた。
東日本大震災と原発事故が起きて4年経っているが、 まだ解決できない問題がたくさんある。
僕は関東に生まれ育っているので、福島に住む人たちの本当の気持ちはわからない。
先日、よく行く洋服屋の店員さんも福島の出身で、地元のために何かできるようにお店を辞めるといっていた。

今の僕にできることは、機会をつくって福島や東北に行って、今、現地がどうなっているのかを見たり、地元の人と話したりすることくらいだと思う。
それも、頻繁にできるわけでもない。
でも、少しずついろいろな地域に出かけて行くようにしていきたいと思う。

日本人宇宙飛行士の長期滞在が新たに決まった

今日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)から金井宣繁宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)の搭乗員として任命されたという発表があった。

 JAXA 金井宣茂宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在搭乗員の任命決定について(JAXA)

金井宇宙飛行士は、1999年に宇宙飛行士に選ばれた3人のうちの1人。
同期は油井亀美也宇宙飛行士と大西卓哉宇宙飛行士だ。
油井宇宙飛行士は現在、ISSに長期滞在しており、今年の12月22日ごろに地球に帰ってくる予定となっている。
大西宇宙飛行士は、2016年6月頃にISSに行き、約6月間の長期滞在搭乗員となることが決まっている。

1999年組の中で金井宇宙飛行士だけが任命されていなかったけれど、これで全員任命され、宇宙に行く日程が具体的になってきた。
金井宇宙飛行士は2017年11月頃から約6か月間滞在する見込みになっている。

ISSまわりの宇宙開発は、ロシアとアメリカの補給船が失敗して、少し元気がないかなという感じがする中で、日本はロケットの打ち上げも成功し、補給船「こうのとり」の キャッチも成功させ、なかなか元気なところを見せている。
そのような中で、やはり日本人宇宙飛行士が毎年ISSに搭乗する状況をつくることができたのは、いいことだと思う。

ただ、その状況に喜んでばかりもいられない。
日本人宇宙飛行士が宇宙に行くことだけで喜ばれる時代はもう終わっている。
今度は、宇宙に行って何をやったかが問われることになる。
これは1人1人の宇宙飛行士が、というよりはJAXAが有人宇宙開発に対してどのような展望をもっているのかにもよるだろう。
今のところ、きぼう日本実験棟を使って医療や産業に役立つような宇宙科学実験をおこなうということをいってはいるが、それでは少し弱い気もする。

2020年以降のISSの運用も不透明な部分もある。
ISS後も見据えて、日本の有人宇宙開発をどのように展開させていくのかを考えいく必要もあるだろう。
もちろん、そのようなことはJAXAの人たちは百も承知だろう。
だが、そういった考えを早いうちから国民に共有していくことも必要だと思う。

宇宙開発はたくさんのお金を使う。
たくさんとはいっても、巨大な競技場をつくるよりかは安いかもしれない。
宇宙開発には夢がある。
日本がこの分野で活躍することで、たくさんの人たちが励まされたり、夢を見ることができると思う。
実はこれはすごいことだ。
そういう夢のある分野だけに、これからやろうとすることを共有して、国民の人たちの賛同を得ることで、計画が実現する後押しになるのではないか。

ここ数十年、世界的に景気があまりよくなくて、宇宙開発は世界的に縮小傾向になっている。
その分、民間の会社ががんばればいいという側面もあるが、国の研究機関は技術をリードする要の存在だ。
だからこそ、国民と離れないで、国民の声援を受けてがんばって欲しいなと思っている。