放蕩記

科学ライター 荒舩良孝の日記

科学を伝える

2018ノーベル化学賞予想

今日はノーベル化学賞の予想。
毎年言っているかもしれないけれど、ノーベル化学賞はとても範囲が広いから、予想がとても難しい。

これまでの受賞分野をまとめると、次のようになる。

 2008年 緑色蛍光たんぱく質(GFP)
 2009年 リボソームの構造と機能の研究
 2010年 有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング
 2011年 準結晶の発見
 2012年 Gタンパク質共役受容体の研究
 2013年 複雑な化学系のためのマルチスケールモデルの開発
 2014年 超高解像度蛍光顕微鏡の開発
 2015年 DNA修復のしくみの研究
 2016年 分子マシンの設計と合成
 2017年 クライオ電子顕微鏡の開発

眺めてみると、3年に一度くらいの割合で生化学的な業績に賞が与えられている。
今年は3年に一度の周期に入っているので、生理学・医学賞での予想でも名前を挙げたチャールズ・デビッド・アリス博士、マイケル・グルンスタイン博士に贈られる可能性もある。
2人の業績は、ヒストンの化学修飾によってDNAの使われ方が変わることを発見し、エピジェネティクスという分野を切り開いた。

また、痛みや熱感覚の分子基盤の発見で、2014年にトムソン・ロイター引用栄誉賞を、2017年にガードナー国際賞を受賞したデヴィッド・ジュリアス博士というのもおもしろと思う。

それから、無機化学分野での受賞が長らくないので、無機化学分野で選ばれるとしたら、鉄系超伝導体の細野秀雄博士、金ナノ粒子の触媒効果を発見した春田正毅博士あたりが候補となるのではないかと思う。

有機化学合成関連も最近、あまりない。
この分野から選ばれるとしたら、今年のクラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞を受賞したジェイコブセン・エポキシ化の開発をしたエリック・ジャコブセン博士もいいのではと思う。
 
こんな感じでどうかな。 
他にも、いろいろと候補になりそうな人は出てくるが、きりがないのでこのあたりにしておこう。

巾着田の近くで発見したカフェでの話

この前、埼玉県の巾着田に曼珠沙華を見にいったという話を書いた。
曼珠沙華を見終わった後に、帰ろうと思ったら、アイアイ橋の近くにおしゃれな感じのカフェがあることに気がついた。
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看板を見ると、「まるさんかくコーヒー」と書いてある。

せっかくだから、コーヒー一杯くらい飲んで見ようと思い立ち、中に入る。
古い民家を改装した風のお店で、それほど広くはないが、土間のような靴を履いたまま飲食できるスペースと、靴を脱いで上がる和室のようなスペースに区切られていて、なかなか居心地のよさそうな空間だった。

僕が入ったの時間が、ランチタイムの終わり際で、ココナツチキンカレーの文字が目に入った。
その文字を見てしまうと、何だか食べたくなってしまい、結局、カレーとコーヒーを注文してしまった。

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カレーはこんな感じで、副菜にいろいろなものがついてきて、ちょっと得した気分。

ゆったりといい気分で食事をすることができた。
帰り際に、お店の人と話をしていて、僕が科学ライターをやっているという話をすると、「そんな仕事があるんだ」というような反応があった。
そして、宇宙のこととか、素粒子の世界のことなど、ちょっと気になっていたけれど、それはどういうことなのということをいろいろと質問して頂いた。

僕が答えられるのは、初歩的なことだけれども、それでも「すごい」という風に食いついてきてくれて、ちょっとしたミニ講座みたいな感じになった。
こんな風に気軽に科学の話ができる場があれば、もっといろいろな人が科学に興味をもつかなとそんなことを思った次第だ。 

何やらすごそうな研究結果が発表された

今日、JAXAからある研究成果の発表があった。

 水素イオンからヘリウムイオンへ、電磁波を介したエネルギーの輸送(JAXA)

これは、タイトルとか読むと、何やらすごそうな感じがする。
実際すごいと思うけれど、中身を読んでも、すぐにはどんな研究なのかつかみにくいと思う。
これをしっかりと説明しようと思うと、かなりの文字量が必要だと思うし、ある程度の前提知識もいる。

ただ、多くの人は難しそうだからということで、中身をあまり読まずに敬遠してしまうのではないかと思う。

それは、ある意味でもったいない気がする。
僕自身も、今の時点で、この研究のことをどれだけわかっているかというと、ほとんどわかっていないと思う。

でも、この発表からは、宇宙では、自分が思っているよりも複雑な現象が起きてるんだなということがわかる。

例えば、地球の周りには、太陽からプラスの電気をもっている陽子(水素原子核)やマイナスの電気をもっている電子など、電気を帯びた粒子が飛んでくる。
その粒子が地球の大気にぶつかると、発光してオーロラになる。
太陽から飛んでくる粒子は、太陽から飛ばされたときの速度を保って飛ぶというような、単純な話ではなくて、電磁波にエネルギーを取られて、速度を落としたり、逆に、電磁波からエネルギーをもらって、速度を上げたりと、たくさんのやり取りとしていることがわかってきたということだ。

こう話をしても、何だかぼんやりした感じに思えるかもしれないが、僕が、今回の研究の話を聞いて、思ったのは、そんな複雑なやり取りがよく観測できたなということだ。

電磁波は目に見えないし、進むのが速い。
水素イオンやヘリウムイオンはとても小さいものだし、これらも動きが速い。
それらの微妙な変化をとらえて、しかも、そのケンカが関係付けられるというのが驚きだ。
いったい、どんな方法で観測し、なぜ、それらの変化が関係あると言えるのかという部分を聞いてみたい。

もしかしたら、その答えはとても専門的で、少し聞いただけでは理解できないかもしれない。
でも、ちょっと難しそうだからと、諦めてしまうと、その先にあるおもしろさには、一生気がつかない。

僕たちは、そういうもったいないことをたくさんしてると思う。
すべてのものをおもしろがるということはできないのだけど、身のまわりのことや自分が触れたニュースなどをなるべくおもしろがって、自分の世界を広げていきたいなと思っている。

夏休みの読書にお薦めの本

東京は台風13号の影響が思ったより少なくて、朝方には雨が止んでいた。
天気予報では、これからまた暑くなりそうだという。
今日は過ごしやすい方だったけれど、また、猛暑が続くのは勘弁して欲しい。

それはそうと、今日は、以前書いた『近未来科学ファイル20XX』シリーズを紹介する。
これは、主に図書館向けに販売されている本で、姪が通っている小学校の図書館にも入っているようだ。

『近未来科学ファイル20XX』シリーズは、「謎めく宇宙の巻」、「生命の神秘の巻」、「超人的テクノロジーの巻」の3巻に分かれている。
どの巻も、現在、研究や開発が進められているトピックスを8〜9個集めている。
冒頭に、未来予測というか、未来で展開されてるだろう世界の話をして、それに続く本編で、なぜ、そういう予想ができるのかという理由や研究の歴史などを紹介している。

タイトルに「未来」とついているので、SFっぽく感じる人もいるかもしれないが、書いてあることは現在進行中のものばかり。
この本は、過去から続く、現在が未来をつくるという気持ちを込めて書いた。
未来のことを知るためには、現在、何が起きてるのかをよく知ることが大切だと思う。

未来は現在の延長線上にあるので、過去から現在にかけてのことを知ることが、未来の出来事を見通す道しるべになるだろう。

図書館で見てもらってもいいですが、アマゾンなどでも売っていますので、買いたいという人は、ぜひ。
もちろん、夏休みの読書感想文にもお薦めです(笑)。

このレトロっぽい表紙も味があっていいですよね。







 

パズルにはまった夜

今日も、原稿書いたり、問い合わせをしたりと平常運転の1日。
原稿が速くかける魔法がないかななどと思いながら、えっちらおっちら書いてます。

夜、数か月前に買ったジグソーパズルを少しやってみようと思った。
ただ、遊んでいるんじゃないですよ。
ちょっと仕事絡みの資料としてもやっておいた方がいいかなという思いもあったのでね。

が、それが間違いのもとだった。
やり始めたのは、スーパーカミオカンデのパズルだ。
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これはすごく難しい。
もともとパズルをあまりやっていないパズル初心者には難敵だ。
セオリー通り、はじっこから攻めてみたが、なかなかはまらない。
風景がすべて光電子増倍管なので、微妙な大きさや光の反射の度合いから位置を推測しなければいけないからたいへんだ。
しかも、見本の箱と見比べながらピースをはめようとしても、パズルの方が縮尺が大きいので、ピースが意外なところで切れていて、難易度を上げている。

始めてから2時間経っても終わりが見えない。
デスロードに入ってしまった。
僕は疲れてしまい、休憩しているのだが、今は妻がパズルにはまっている。
最初はお手伝い感覚だったが、だんだんと本気モードになっている。
僕より才能があるかもしれない。

さて、いつ完成することやら。
まだピースは半分も埋めていないかな。

スーパーカミオカンデのパズルの販売情報は、東大宇宙線研究所のWebページに出ているので、参考にしてください。